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特集企画

MY LOCAL POP UP

ローカルを愛するあの店に出かけよう!

日々の暮らしに発見と楽しみを届けてくれるローカルショップ。

街に明かりを灯し続けるようなそんなショップに、

私たちP.F.Candle Co.も日頃から共感と親しみを覚えます。

本企画ではそんなショップオーナーやバイヤーへの取材を通し、

お店のこだわりや、ローカルに対する想いなどを紹介します。

ショップでは期間限定ポップアップ・イベントも開催予定です。

​ぜひインタビューを読んでから、お店に足を運んでみてください!

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VOL.06
2025 SUMMER
IBARAKI TSUKUBA
Blackboard (茨城・つくば)

積み重なる時と、暮らしの風景。

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Blackboard
ブラックボード
つくば駅から車で10分ほど郊外に走らせた場所にある「Blackboard」は、北欧ヴィンテージ家具とオリジナル家具「Karf」を中心に扱うインテリアショップ。リノベーションした天井高のある店内にはカフェを併設し、住と食のライフスタイル提案を行う。店内什器にはヴィンテージマテリアルを贅沢に使用し、他にはない空間と時間を作り出している。暮らしの道具を揃えた雑貨コーナーも充実し、訪れる人誰もが長く滞在できるショップとなっている。

 
人の暮らしと歳月に磨かれた一点ものの家具に出会える場所

代官山から移転した目黒エリアは、おりしも1990年代後半からインテリアショップが集積する稀有な場所として注目され始めていた。「Karf」もまた北欧デザインとヴィンテージ家具のパイオニア的存在として、新しい時代のライフスタイルを提案し続けていく。やがて2010年にヴィンテージ専門店「Blackboard」を新たに立ち上げた彼らは、その数年後に次なるステージをつくばの地に見出すことになる。

東京から一時間という距離にありながら、広い空と豊かな風景が広がるこの地で、欧米のディーラーを思わせる空間に厳選したヴィンテージ家具とカフェを融合した空間をプロデュースする。それは単なるモノを売る場ではなく、「暮らしの風景」を伝える場であり、訪れる人の記憶に残る小さな物語の舞台でもある。カフェに置かれた椅子やテーブルは、国も年代も異なるヴィンテージの一点ものばかり。素材の手触りや、経年の美しさを五感で感じながら、ただその時間をゆったりと過ごすことができる場所なのだ。

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- 目黒のお店の次に、このつくばを選ばれた理由を教えてください。


幾子さん: もともとこの地域でお仕事を一緒にしている方がいて行き来する中で、このつくばの景色と東京では手に入らないようなこの地域の環境に注目していたんです。それでずっと出店を考えている中でこの物件と出会ったんです。つくばは東京から電車でも車でも一時間ちょっとで来れてしまう。それでいてこの豊かな自然と景色が目の前にあって。ここだ!って。

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海外に買付に行った際に、ヴィンテージの家具を倉庫に見に行ったりするとやっぱり面白いんです。家具がこう高く積み上がってたりして。ここもそういうイメージを膨らませました。で、同時にそういう倉庫に行くと必ず疲れてしまうので、ここにもお茶をしたり、甘いものを食べられるスペースがあったら良いねと、そんなイメージが始まりでした。


雄一さん: 以前は飲食店だったんですが、元の内装は全て取っ払い、屋根と柱ぐらいを残して、リノベーションしました。カフェスペースにゆとりを持たせ、残りは家具とギャラリースペースに。彼女(幾子さん)としては暮らしを考えると、やはり食に行き着くし、僕たちもトライしたいねとずっと話していたので。僕たちが若い頃に海外に行って沢山刺激を受けた風景や空気感、そういうものを日本でも体験できる場所になれたらといつも思っています。長い目で見たら種まきのようなお店かも知れないですね。

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​カフェメニューの中でも人気の「BBプレート」は、旬の野菜をふんだんに使った体にも幸せな一品。

- 店内のインテリア什器はどれも趣がありますね。


雄一さん: カフェエリアを区切っているあのルーバー(*5)は、もともとコペンハーゲンで買い付けた「肋木(ろくぼく)」(*6)なんです。ほら日本でも体育館にあるでしょ。ヨーロッパの解体屋さんって結構綺麗に解体するんです、リユースできるように。それを買い付けて来たんです。

幾子さん: 「これどうするの?」って言うのを島田は買い付けて来るんですよ。なんか気になるんでしょうね。その後は倉庫に一度眠ることになるんですけど、カフェをデザインする時に物販ゾーンと仕切る方法を考えていたんですけど、壁を作るのはもったいないし、物販の方からもこっちの景色を見て欲しかったので、透過性のある素材を探していたんです。ガラスとか色々と考えていたんですが、たまたま倉庫に行ったら、これが眠ってて。すぐに「あ!これだ!」って。​そんな風にこのカフェにある家具は、ほぼ倉庫にストックしていたヴィンテージ家具を使っています。カフェ用にわざわざ買い付けたものは、ほとんどないんです。​​

雄一さん: 例えばそこにあるウィンザーチェア(*7)は1780年頃のものです。その当時ってまだまともな機械がない時代で、刳物(くりもの)(*8)も足踏みで回しながらやっている時代。今みたいに木材を人工乾燥する技術もなくて、全て自然乾燥したものを使ってる。そうすると歪むんですよ。一個一個のパーツも全部に個体差があるし、変形によって形も変わっちゃってる。でもその風合い、いつの間にかエイジングが施され、完成していく深さみたいなものがそこにあるんです。

​幾子さん: ヴィンテージってその国やその時代を感じることができるので、博物館に飾って置いておくというのはもったいないと思ってるんです。特に家具は一番身近な道具だと考えていて、やっぱり実際に使って感じて欲しい。そこでご飯を食べたり、座ったり、触れたりと、そんな風に日々を過ごすと、性格や選ぶ物にも影響を与え、その人を育んでくれると信じています。何より本物に触れることが凄く大切で、日々使っていくうちに無意識にそういう感覚が刷り込まれていくんです。

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コペンハーゲンの学校で役目を終えた肋木は、日本でインテリア什器として新しい時間を刻み始めている。

- ヴィンテージ家具の買い付けでは、特にどんなところに基準を置かれていますか?


雄一さん: 特別にデザイナーの名前とかでは判断していません。もともと僕らのヴィンテージに対するアプローチは、現代ではこんな材料使えないなとか、こんなに手をかけたものがこの値段で買えるの、という本当に日常使いとして提供したいという思いから始まりました。100年前の家具が現代の日常でもこんなに使えるんだ、しかも凄く繊細で質感も良い、みたいなそういう感覚を大切にしています。


- 家具としての魅力はどういったところでしょうか。


雄一さん: 魅力はやっぱり、新しいものと違う圧倒的な存在感を持っていて、一瞬にしてインテリアの空気を変える力です。ヴィンテージの家具が一つあるだけで、インテリアが変わる。それが一番の魅力です。そしてその時代にしか存在しない材料や手仕事の技術など、その時代背景をもった貴重性も魅力の一つですね。

幾子さん: それから歴史はお金では買えないので、それを持っているヴィンテージに触れることができる場所として、ここは魅力に感じていただけたら嬉しいです。

- これからヴィンテージ家具を暮らしに取り入れたいという方へ、おすすめの方法などはありますか?


雄一さん: 絵画なんかもそうだと思うんですが、やっぱりまずは一つ買ってみることをお勧めしたいです。一つ買って家に置いて眺めてみる。実際の暮らしの中で触れていくと分かって来るんです。そうしないといつまでたっても生活の中から切り離された存在になってしまうので。後は余白やバランスを意識することでしょうか。新しいモノには新しいパワーがあるので、そういうものとのバランスが大事かなと思っています。

 

- 新しいモノという部分では「Karf」のオリジナル家具がその役割だと思いますが、新作のインスピレーションはどのように湧いて来ますか?


雄一さん: 過去の古いモノで現代まで残って来たものは安心感がありますよね。時代を経てなお変わらないその強さや価値を持っている。そのクリエイティビティって本当に凄いなって思います。なので、自分がオリジナルとして送り出す家具は、派手さはないけど30年経っても何か良いよねって思ってもらえるような普遍性をヴィンテージの中から少し抽出しながら、現代の住まいの中で表現しています。それは単純なリプロダクションではなく、そこに現代のオリジナリティと現代性を持たせたデザインを意識しています。


- 最後にお二人にとっての今後のビジョンを教えてください。


雄一さん: 実はこの家具事業とは別に「パルクール」(*9)という競技の施設設計やデザインなど競技環境の企画などに今携わっています。僕たちの次男が競技者でありライフワークとして関わっている縁もあり、インテリアや家具といった分野での経験を生かしながら、僕たちなりの取り組みをさせてもらってます。

例えばジョギングや水泳のように、日常の健康維持のための一つのアプローチとしてパルクールがあっても良いんじゃないかと考えていて、競技者だけのスポーツじゃなく、お年寄りから小さなお子さんまで身体を積極的に動かせるスポーツとして、そうした環境を僕たちなりにお洒落にかっこいいものとして提案できれば、もっと普及のお手伝いができるかなと。

幾子さん: 10代で息子がパルクールに出会って、練習する場所がないと分かった時に、街にはティーンエイジャーが解放される場所がないんだと気付かされたんです。児童館は小さな子どもの空間出し、体育館は責任者がいないと借りれないとか。さっきもお話ししたように、無意識に触れて育つ環境が子どもたちには大切だと考えていて、家の中だとそれが家具だったりするわけですけど、屋外の遊ぶ空間としてパルクールは繋がったんです。

雄一さん: アメリカでは「フリーランニング」と呼ぶんですが、街には専用のジムがあったりして、環境がとても良いんです。以前ロサンゼルスのジムに息子が行った際も、すぐに受け入れてくれて、一緒に練習してくれたりしたんです。それからコペンハーゲンも凄く盛んで、大学にはパルクール学科があるほどで、行政が積極的にパルクールを支援しているんです。偶然とはいえ、北欧や西海岸がパルクールにも出会うきっかけになったと感じています。将来的にはパルクールのイメージの家具やインテリア、アパレルなど手がけるのも面白いですね。地方で空いたスペースの有効活用や健康増進などの面で、社会課題の解決の一助にもなるコンテンツなので、その無限の可能性に取り組んでいきたいと思っています。

 

ヴィンテージ家具がもつ唯一性に深い愛を注ぐ雄一さんと、人々の暮らしに優しい眼差しを向ける幾子さん。かつてヨーロッパで出会った素材や空気、あるいはアメリカ西海岸で見た自由な暮らし。家具という媒体を通じて、そうした人と風景、記憶と未来をつなぐ装置として今日も「Blackboard」は時を刻んでいる。窓辺に流れるゆるやかな時間とキッチンから漂うコーヒーの香りが、まるでどこか別の国に訪れたような気にさせてくれる、ここでしか味わえない体験とともに。

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左:島田 幾子 Karf代表 右:島田 雄一 Karf創業者

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(*5) ルーバー:細長い羽板を一定の角度で並べた建材。通風や採光を調整するために用いられる。

(*6) 肋木:体育館などで見られる木製のはしご状設備。運動やストレッチに使用される機器。

(*7ウィンザーチェア :18世紀のイギリスで発展した、挽物の脚と背棒を組み合わせた伝統的な木製椅子。

(*8刳物(くりもの) :木材を彫って中をくり抜く技法。盆や椀などの木工品に多く用いられる。

(*9) パルクール :フランス発祥で、都市の建物や障害物を飛び越えながら移動する身体表現、トレーニング法。

MY LOCAL POP UP

P.F.Candle Co. 期間限定イベント
Blackboard (茨城・つくば)
2025年7月4日(金)〜7月21日(月・祝)

住所:茨城県つくば市手代木291-3
​営業時間:インテリア 10:30〜18:00 / カフェ L.O. 17:00

​*定休日 / 水曜日

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