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特集企画

MY LOCAL POP UP

ローカルを愛するあの店に出かけよう!

日々の暮らしに発見と楽しみを届けてくれるローカルショップ。

街に明かりを灯し続けるようなそんなショップに、

私たちP.F.Candle Co.も日頃から共感と親しみを覚えます。

本企画ではそんなショップオーナーやバイヤーへの取材を通し、

お店のこだわりや、ローカルに対する想いなどを紹介します。

ショップでは期間限定ポップアップ・イベントも開催予定です。

​ぜひインタビューを読んでから、お店に足を運んでみてください!

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VOL.06
2025 SUMMER
IBARAKI TSUKUBA
Blackboard (茨城・つくば)

積み重なる時と、暮らしの風景。

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Blackboard
ブラックボード
つくば駅から車で10分ほど郊外に走らせた場所にある「Blackboard」は、北欧ヴィンテージ家具とオリジナル家具「Karf」を中心に扱うインテリアショップ。リノベーションした天井高のある店内にはカフェを併設し、住と食のライフスタイル提案を行う。店内什器にはヴィンテージマテリアルを贅沢に使用し、他にはない空間と時間を作り出している。暮らしの道具を揃えた雑貨コーナーも充実し、訪れる人誰もが長く滞在できるショップとなっている。

 
ヴィンテージ家具と共に歩む、二人の旅の始まり。

バブル前夜の1985年、東京・代官山の一角に「Karf(カーフ)」(*1)は産声をあげた。量産家具が依然として支持される時代の中で、長く愛されるモノ作りを目指し家具工房とデザインの現場を繋ぎながら、創業者・島田雄一さんは家具の魅力に引き込まれていった。時を同じく、日本を代表するライフスタイル誌の編集部で青春を過ごした幾子さんが加わり、Karfの、そして二人の旅は始まった。

アンティークやヴィンテージという概念がまだそれほど世間に浸透していない頃から、格安チケットを取っては欧州へ旅を繰り返し、現地のディーラーを回りながら買付をする。新しいものが溢れる社会だからこそ、古いものが宿す時間と空気を求めて二人はヴィンテージの旅を続けた。その旅の途中に「Blackboard」はあるのかも知れない。つくばの豊かな自然を窓の外に眺めながら、厳選されたヴィンテージ家具に深く腰を下ろし、創業から40年にわたるお二人の物語を伺った。

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- まずはお二人が家具の世界に出会うきっかけをお伺いできますか?


雄一さん: 僕は80年代前半に学生時代を過ごしていた頃、「一生を通してやり続けられることは何だろう」と色々と模索していたんです。その中でやっぱりモノが好きで、特に使っていると手に馴染んでくる感覚や、味が出てくる感覚に惹かれていたので、思い切って雑貨業界に入ったんです。ところが僕が入ったファンシー雑貨の世界は、キャラクターの鮮度が命で、かつ非常に短命なんです。常に新しいものが入れ替わっていく世界で、寿命を終えたものは大量の返品になる時代でした。もっとロングライフなモノとの付き合いがしたいと思い、そうして辿り着いたのが家具でした。それも量産家具ではなくハンドメイドの工房家具の世界。会社勤めの傍ら週末になると、知人の工房にお邪魔してお手伝いのようなことをさせてもらってました。材料の仕入れから加工、販売までする自己完結的なスタイルが当時の自分には素敵に映ったんです。

ただ、思い切って雑貨メーカーを退職し独立に踏み切った頃には、自分が現場で作るというよりも、そうした工房と一般のお客様を繋げる方が自分には向いていると感じ、そこから始めました。そうして「Karf」をスタートさせたのが1985年のことです。インテリアデザイン会社や設計事務所にアポイントを入れては、工房とつなげる仕事を開拓していました。


幾子さん: もともと本が好きで雑誌の世界に入りたかったので、学生時代にはマガジンハウスの『ブルータス』(*2)でアルバイトをしました。編集部は当時の日本カルチャーを動かしている方たちばかりで、「これからは西海岸だ!」みたいなカリフォルニア全盛の頃。カメラマンやライター、編集長など刺激の溢れる現場で、絶対にこの業界に行くんだって強く思っていました。

 

実際に出版社に就職してみると任されたのは男性向けグラビア誌で、毎日アイドルの方々とお仕事していました。今でもそうだと思いますが、当時の雑誌業界はハードワークで​、体力的な限界もあり業界を離れることに。ちょうどその時に島田が「Karf」を代官山に立ち上げ家具の仕事をすると言うので、暇を持て余しているしと、お手伝いで始める感じでした。

- 実際に創業してみていかがでしたか?


雄一さん: 事業を始めてすぐに気づいたことが、工房が作りたいモノと、クライアントが依頼したいモノがマッチングしないということでした。なのでそこを上手に変換してあげる、通訳してあげる作業が大事で、そこに事業の可能性が生まれたんです。

バブルの勢いもあり、あるアパレルブランドが新規出店を大量にする時に「新しい店舗にアンティークの家具が欲しいんだけど、出店のたびに探すのが大変だから、こんなテーブル作れない?」と依頼が来るんです。それでイメージとなる写真を大量にお借りして、工房に持ち込む。すると工房では親方が「こんな仕上げで良いの?こんな節だらけの素材で良いの?」と聞くわけです。製作現場からすると当たり前なんですが、材料自体普通に流通していないので、新木場に一緒に材木を見に行ったりして、「これでお願いします!」なんて説得したりしてました。

幾子さん: その当時(80年代初頭)は、ちょうど日本に欧米のアンティーク家具という概念が広まり始めた時期でした。ショップなどでもディスプレイ什器や内装に使われ始めていて。それまでの日本の伝統的な家具スタイルは、どちらかと言うとガチッと作り込む世界でしたので、欧米のアンティーク家具のような雰囲気のモノがなく、オリジナルで作ることにしたんです。

雄一さん: 仕事も手探りで進めていく中で、僕たちが結婚した時も、実際にアンティークの家具を見に行こうとイギリスまで行ったりしていました。今みたいにインターネットもスマートフォンもない時代なので、色んな人から情報を集めて、安い宿に泊まってはあちこちのマーケットに足を運んだり、家具のディーラーを探し回ったりしましたね。行くと買いたくなるし、買い付けては持って帰ってくるので、少しずつ受注生産型から、買い付けの家具をお店に置いたりするようになりました。合わせてオリジナル家具もスタートさせました。

出発点となった工房家具はいわゆる「道具」としての家具でしたが、時代の変化に合わせるように「インテリア」として全体の中での調和であったり、雰囲気作りの重要性に目を向けていきました。進んでいく中で課題にぶち当たるたびに、新しい知識を学び、また新しい興味に向かって動いていく、そんな時期だったことを覚えています。

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​暮らしの風景をイメージしやすいようにディスプレイされたビンテージ家具たち。

- その頃海外への買い付けはヨーロッパが主な場所だったんですか。


雄一さん: そうですね、主にヨーロッパでしたが、実は彼女(幾子さん)の姉が当時からカリフォルニアに住んでいて、なのでアメリカにも行っていました。​現地の暮らしぶりに触れたり、蚤の市なども訪問したり。あの当時はまだグローバリズムが浸透する前で、それぞれの国のモノには、癖であったり個性といったものが色濃く残っていた時代ですよね。それこそまだ余裕がない頃は「エアロフロート航空」(*3)でモスクワ経由でヨーロッパまで行ったりしていましたね。当時はまだソビエト連邦で、通信はテレックス(*4)の時代で、未知の部分がまだまだ多い時代でしたね。


- 「Karf(カーフ)」はその後どのように変化をしていったのでしょうか。


雄一さん: 大きな転換点になったのがバブルの崩壊でした。仕事をしていたデザイナーや建築家が仕事を失っていくなかで、僕たちも変化を迫られました。そこで目を向けたのが一般の個人のお客様のライフスタイルでした。僕たちが海外に行って見てきたインテリアや、その空気感みたいなものを、家具単体ではなく環境から表現したいと考えた時に、それを表現できる場所が必要になって、西五反田(目黒と五反田の間)にある印刷工場跡をリノベーションして移転しました。それが1994年のことです。その後1999年には目黒通りに拡大移転しました。

さらに2000年に初めてコペンハーゲンに行って、北欧のヴィンテージ家具を仕入れ始めたんですが。そこから怒涛のごとく北欧ブームがやってきました。オリジナルの「Karf」と買い付けて来るヴィンテージ家具の両方をやっていく中で、ヴィンテージの数が多くなりすぎたため、世界観をもっとしっかり提案するためには一度情報を整理をした方がいいということになり、2010年に新たにヴィンテージ家具専門店「Blackboard(ブラックボード)」を誕生させました。

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(*1) Karf(カーフ):1985年に代官山で創業。オリジナル家具「Karf」と北欧ヴィンテージ家具を扱うインテリアショップ。

(*2) ブルータス:マガジンハウス社発行のカルチャー雑誌。デザイン、旅、食、建築など幅広い特集が特徴。

(*3エアロフロート航空 :旧ソ連の国営航空会社。冷戦期には東欧・北欧への渡航手段としても利用された。

(*4テレックス :ファックス以前に使われた文字送信システム。国際的な業務連絡に広く用いられた。

MY LOCAL POP UP

P.F.Candle Co. 期間限定イベント
Blackboard (茨城・つくば)
2025年7月4日(金)〜7月21日(月・祝)

住所:茨城県つくば市手代木291-3
​営業時間:インテリア 10:30〜18:00 / カフェ L.O. 17:00

​*定休日 / 水曜日

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