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特集企画
MY LOCAL POP UP
ローカルを愛するあの店に出かけよう！
日々の暮らしに発見と楽しみを届けてくれるローカルショップ。
街に明かりを灯し続けるようなそんなショップに、
私たちP.F.Candle Co.も日頃から共感と親しみを覚えます。
本企画ではそんなショップオーナーやバイヤーへの取材を通し、
お店のこだわりや、ローカルに対する想いなどを紹介します。
ショップでは期間限定ポップアップ・イベントも開催予定です。
ぜひインタビューを読んでから、お店に足を運んでみてください！
VOL.07
2025 AUTUMN
ISHIKAWA KANAZAWA
ZUIUN (石川・金沢)
幸運の雲の下で。 ZUIUNが紡ぐ暮らしと縁の物語
ZUIUN
ズイウン
建築から始まり家具、インテリア、雑貨そして食と「衣食住」すべてに関わる「豊かな暮らしの提案社」として、石川県野々市市と金沢市の２店舗で、建築設計事務所、インテリアショップ、ダイニング・ブックカフェを運営するZUIUN。空間全体からお気に入りの椅子一脚、そして夕食の１シーンまで、誰にとっても“特別で豊かな暮らし”を実現できるよう、こだわりのセレクトとサービスで日々進化を続けています。
偶然に生い茂ったツタや、偶然に出現した広大な地下空間。それらを常にポジティブに、象徴的なアイコンへと変えてきたZUIUN。単なる偶然の産物なのか、それとも必然がもたらした幸運だろうか。その背景には正理さんが大切にしてきた想いと価値観があるという。20年前に出会った「瑞雲ー幸福を呼ぶ雲」が導いてくれた彼らの歩みを聞いた。
- 20年前に描いていた「ZUIUN」の姿は実現できていますか？
正理さん：
思うのは、今ちゃんと全部ご提案できるようになっているということです。住宅も、家具も、インテリア雑貨も、そして食も。実は私たち販売スタッフも施工に行くんです。「ポーターズペイント」(*4)の塗装作業は私たちもするので、実際の作業のコツであったり、色の詳細も全部お伝えできるんです。とにかく楽しいんですよ、塗装作業が。みんなで専用の作業着を着て、気分も上がって。
社内には建築とショップ、そしてダイニングの３つの部署があって、代表の方針でどの部署もお互いを手伝いに行くことにしています。ペイントの施工にショップスタッフが行くのもそうですし、ダイニングがイベント出店する際には建築から手伝いに行くという風にしています。
インタビューアー： 実はP.F.Candle Co.でも全く同じことを取り入れています。以前、オーナーのクリスティンが教えてくれたんですが、彼らにはクリエイティブチームと生産チームがあるんですが、ある日お互いの仕事をスイッチするんです。そうするとお互いの仕事について理解が生まれる。理解が生まれるとリスペクトが生まれると。そうすることでブランド全体としてひとつの意思統一ができると言うんです。何より互いに楽しみながら取り組んでいるところが、とても似ていますね。
正理さん： 私たちがダイニングのお手伝いをするときも、本当に頭は使うし、こんなスピードで仕事をするの！ってリスペクトになるんです。そうやってお互いの部署がちゃんと思いやっていることが大事なことですよね。
- それが20年かけて成功されてきた秘訣でもある？
正理さん： 正直もういっぱい失敗をしてきました。物事を積んだり崩したりを手探りでやりながら、今があります。チャレンジしたことが上手くいくほうが少なくて。やって、違うを繰り返して、失敗の数は数え切れず、行動してみてやっと分かることばかりです。でもそうやって20年経って、関わるみんなと同じ想いが浸透して、今はそこに大きな調和が生まれ、みんなで助け合えているんです。
こうして日々暮らしていると何が起こるか分からないですよね。会社運営もそうですし、自然災害もそうですし。でも何かが起こった時に、「どう対処するか？」を考える前に、「どう思うか？」を大切にしているんです。どう思うか？によって、対処の仕方も変わってくるんです。だからもし大変なことが起こったとしても、「どうこれを楽しもう！」というスタンスで、みんなで動きたいと思っています。家庭でも子育てでも、そうやって考えるように心がけてきました。
- 特に北陸は近年災害に見舞われることが増えました。
正理さん： 地震も、その後の大雨災害も本当に苦しかったです。けれど災害に遭われた方々に勇気づけられることが本当に多くて。ご依頼をいただいて家具の配送や塗装をしに現地に伺う度に、言葉を失うような光景の中でも、前を向いて明るく振る舞われる姿に心打たれます。逆にこちらが勇気をいただくほどで、本当に学びが多いです。
地元という意味では、元々石川のセレクト品はゼロだったんです。私自身も富山出身ということもあり、当初は地元のものを紹介するというより外のブランドを求める傾向がありました。ところがそのうち、この地域のブランドやメーカーさんに注目するようになり、今では北陸のものがたくさん並んでいます。本当に自分たちが紹介したいものだけしかセレクトしていなんですが、それでもまだセレクトしきれないほどです。改めてこの地域の凄さを実感しています。石川だけではなく、福井も富山も、北陸のモノ作りは本当に凄いんです。これからはそれらを全国に発信していきたいと思っています。
- それがZUIUNのこれからのビジョンなんですね。
正理さん： そうですね。自分たちのオンラインショップなどで、商品にとどまらず作り手のストーリーや背景に触れるような紹介をしていきたいと思っています。
例えば、弊社のオリジナルブランドの一つである鋳物製の表札(*5)があるんですが、これらは北陸三県のメーカーさんと協業で生産しています。住宅施工だと表札もこだわりたい要素なんですが、素材やデザインにどうしても妥協するケースが出てたんです。そこでオリジナルを作ってしまおうとなりまして。私たちショップ側が作り手さんに関しては全面的に知っていますし、デザインも自分たちでできますし、建築部門とショップとメーカーさんで一緒になってプロデュースしています。その商品開発でも、また挑戦と失敗を繰り返すのですが、やはりそこから多くを学ぶことができるんです。
- 失敗をポジティブに変える視点がとても印象的です。最後になりますが、その「瑞雲」をこれまでに実際にご覧になられたことはありますか？。
正理さん： あります！「立山の上に瑞雲が出たよ」とお客様から写真を送っていただいたことが最初でした。拝見してすごく感動しました。それから何回か自分でも目撃するようになって。今年はまだ見てませんが、去年は一度だけ見ることができました。普段から気にして自分でも空を見てるんだと思います（笑）。でも何よりも、「瑞雲が出てたよ」とお客様皆さまが知らせてくださるのが嬉しくて。
- それはとても嬉しいご報告ですね。お客様にもきっと素敵なことが訪れると思うと、なんだか温かい気持ちになりますね。
正理さん： これは個人的な趣味なんですが、全国の古い神社を全て訪れたいと思っているんです。有名なところはおおよそ全て参拝したので、今では昔からその地域にあるようなごく普通の神社をお参りしています。恐らく国内の3分の2は行ってると思います（笑）。夫婦で休みが取れる度に各地を旅行しながら、その地域の古い神社を訪問するんです。本州・九州はだいたい訪問していて、あと３分の１くらいが残ってて。昨年末には対馬まで行ってきました。
その影響もあって最近では狛犬や縄文土器もセレクトしています（笑）。元々みうらじゅんさん(*6)も大好きでみうらさんの本も置いてあるんですが、一度奥様のbirdさんにここでライブをしていただいたことがあったんですが、その時に「うちの旦那の本があるじゃないですか！」って気づいていただいて。あまりに普通に置いていたので、私もご夫婦だということをすっかり忘れていて、大慌てした記憶があります（笑）。
「幸運の雲」に導かれたZUIUNの20年の足跡は、単なる偶然が重なった物語ではなかった。それは失敗を肯定的に受け入れながらも、揺るぎない想いと人々の暮らしへの眼差しが、まるで美しい調和を奏でるようにひとつに重なり合う風景だった。建築、インテリア、そして食。私たちの日々の営みに欠かせないそれらが、この場所を通してゆるやかに繋がり合い、鮮やかな色彩を生んでいる。
その歩みを語る正理さんの口調には、軽やかで自然体な風が流れていた。虹色に輝く幸運の雲は、きっと誰の暮らしのすぐそばにも浮かんでいるのかも知れない。それは絶え間なく続くこの営みこそが、何気ない日常を照らす小さな光なのだから。
(*4) ポーターズペイント：オーストラリア生まれの自然で豊かな風合いが特徴の塗料ブランド。オーストラリアで最も有名なペイントブランドのひとつ。
(*5) 鋳物製の表札：ZUIUNオリジナル商品。元々は住宅・店舗施工の際に特注で製作していた表札を自社ブランド化。北陸三県の職人の手作業による完全オリジナル製品。
(*6) みうらじゅん：「マイブーム」「ゆるきゃら」などの造語を生み出したイラストレーター。仏像マニアとしても知られ、『般若心経』を市街地の看板の文字から収集し完成させた『アウトドア般若心経』を発行している。
